Cradle
管理人の生態。いろんなモノへのネタバレ配慮が欠けてるのでご注意ください。
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迎えに行くから月で待ってて
実家に帰ったらマイパソ子がインターネットに繋げません。
つーわけで、今は父のPCを使っています。
キーボードが違って、打ちにくい・・・・・・
サイトの更新もできないので、1年半くらいぶりのSSはとりあえず続きにUP。
いつもくらいの文量あるんで、ケータイから読むのはオススメしません。
内容は、前にも書いたとおり「望美in石田軍(B●SARA3)」です。
完全に自己満足★
つーわけで、今は父のPCを使っています。
キーボードが違って、打ちにくい・・・・・・
サイトの更新もできないので、1年半くらいぶりのSSはとりあえず続きにUP。
いつもくらいの文量あるんで、ケータイから読むのはオススメしません。
内容は、前にも書いたとおり「望美in石田軍(B●SARA3)」です。
完全に自己満足★
「私は、アイツを許さない!!」
血を吐くような怨嗟の声を、私は他に知らない。
風を切る音と同時に頬に走る熱。
反射的に触れれば手に付く、ぬるりと赤い血。
また、やってしまった。
「貴様は、何度言えばわかる!!」
真っ黒な闇と冴え冴えとした青い月の光。
草木も眠る丑三つ時。
誰も彼も少ない休息を取る深夜の陣。
そこから外れた森の奥で、望美は三成に刀を向けられていた。
「ごめん、なさい」
「学習能力というものが無いのか、貴様は。次は本当に殺すぞ」
刀を仕舞いながら三成は望美を睨みつける。
戦で野営を行うときは、ほぼ毎回起こる光景。
深夜になっても休もうとしない三成に声をかけるタイミングを、望美はいつも間違える。
おかげで毎回流血沙汰。といっても、浅く切られるだけなので大した出血量ではない。
ただ、血が流れるそのたびに三成は微かに顔を歪める。
敵でもない女を無闇に傷つけるのを三成は好まない。
そうと知っていて、あえて切られに行く自分は大概だと望美は思う。
けれど、他に声の掛け方がわからない。
タイミングはいつもわざと外している。
「もうそろそろ、休んだほうが良いんじゃないですか?」
「私がいつ休もうと、貴様には関係ないだろう」
「そうなんですけど。でも、吉継さんに休ませろって言われちゃいましたから」
それは、嘘ではないが真実でもない。
いつまでたっても休まない三成を見て右往左往している望美に、吉継が声を掛けるというのが本当のところ。
最近では吉継の方も慣れたのか、行ったり来たりを繰り返す前に声を掛けられる。
それを免罪符に、望美は森の中、過去に思いを馳せる三成に声を掛けにいくのだ。
「貴様も飽きないな」
「・・・?何に、ですか?」
「私を気に掛けたところで、貴様には何の利点も無いだろう」
「別に、損得で動いてるわけじゃないですから」
損得で動いているのなら、石田三成の傍になどいない。
日本史がからっきしの望美だって知っている。この先に起きるのは関ヶ原の戦い。勝つのは東軍、徳川家康だ。
だから、望美が三成の傍にいるのは損得じゃない。
ただ、放っておけなかっただけ。
「三成さん、自分の顔色見たことあります?今にも死にそうなんですから、少しは休まないと」
「貴様・・・・・・余程、死にたいらしいな?」
三成が刀に手を掛ける。
望美の背中に冷たい汗が流れた。
半分冗談だったのに、藪蛇だったかもしれない。目が本気だ。
「ちょっ、待っ、ストップ!死んじゃう、死んじゃいますから!!」
「・・・・・・」
無言のまま、三成は望美へと近付いていく。
蛇に睨まれた蛙のように、望美は真っ青になって立ち尽くす。
間合いに入ったと思った瞬間。
ため息を一つ零して、三成は刀から手を外した。
「間抜けな面を晒すな」
「酷っ!誰の所為ですか!!本気で殺されるかと思ったんですよ!!」
「それだけ口答えが出来れば、充分だな」
三成は微かに口元を歪める。
望美もそれに小さく笑みを返す。今、このときは三成の意識が過去で無く、「ここ」にあることにそっと息をついた。
「・・・元々そういう顔色だって、ちゃんと知ってます。でも、心配なんですよ」
「くだらん」
「三成さんにとっては、そうかもしれないですけど」
人の心配をバッサリと切り捨てる三成の物言いに、望美は苦い笑みを零す。
傲慢で偏屈。安易に手を出せば、噛み殺しにかかってくる手負いの獣。石田三成という人間は厄介なこと、この上ない。
それでも、放っておけなかった。だって、目を離せば知らないところで死んでしまいそうだ。
暗闇に映える銀の髪。
月の光で蒼く見える肌の色。
精巧に作られたビスクドールのよう。およそ、生きている気配がしない。
ただ一つ、憎しみを宿した瞳だけが闇夜の中で薄氷のように鋭く光る。
こんなに苛烈で儚いものを望美は見たことが無かった。
「行くぞ」
「・・・・・・え?」
「お前は私を連れ戻しに来たのだろう?」
夜露に濡れる草木を踏み分けて、三成は陣へと戻っていく。
月光に濡れた銀色が望美の横を通り過ぎる。
その鮮やかな軌跡に目を奪われて、望美は身動きが取れなくなる。
「どうした?」
止まったまま動かない望美を見て、訝しむように三成が振り返る。
「っあ。今、行きます!」
慌てて望美は三成の後を追いかける。何歩か駆ければ、すぐに三成の横に追いついた。
歩幅の違いを考慮してか、三成は心なしゆっくり歩く。本人も気づいてないだろうそれに、望美は笑みを隠せなかった。
本当は優しい人なのだ。
だからこそ、復讐の鬼と化した現状が切なかった。
「この戦、明日には決着がつきそうですか?」
「つけてみせる。こんなところで時間を食っている場合ではないからな」
三成の瞳の奥で憎悪の焔が揺らめく。望美はただ、それを静かに見上げる。
止められない。
豊臣秀吉がどういう人で。豊臣軍がどんなもので。三成にとってそれらがどれだけ大切なものだったのか、望美は知らない。想像は出来ても、それはあくまでも想像でしかなかった。
望美が知っているのは三成が吐き出した、たった一言。この世全ての憎悪と怨嗟をかき集めたような慟哭。
だから、向かう先が破滅だと知っていて、望美は止めない。
せめて最期まで一緒にいるのだと。
そう、決めた。
「置いていかないでくださいね」
「ならば、それなりの働きをしてみせろ。弱い奴はいらん」
「わかってます」
隣を歩くためなら、何だってしよう。この手が朱に染まることだって、今さらなんとも思わない。
だから、どうか。
死が二人を分かつまで。
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